【実例】アクセンチュアで戦略部門にトランスファーするまでの道のり

アクセンチュアには、事業部や部門を社内転職できるトランスファー制度があります。でも、「本当に異動できるの?」「戦略部門なんて夢のまた夢なんじゃ?」と思う人も多いはず。
今回は、実際に新卒でアクセンチュアのITコンサルとして入社し、マネジメントコンサル(MC)を経て戦略部門にトランスファーした永安さんの話をもとに、アクセンチュア社内異動のリアルと成功のコツをひも解いていきましょう。記事の最後に、実際のインタビュー動画を載せていますので、そちらもご覧ください。
アクセンチュアのトランスファーとは?
アクセンチュアでは、いわゆる社内転職制度が比較的活発に行われています。事業部や部門が細かく分かれており、「ITコンサル」、「マネジメントコンサル(MC)」、「戦略」といった専門領域へ、本人の希望と実績次第でトランスファー(異動)できるチャンスがあるのです。
ただし、それは「誰でもいつでも簡単にできる」という話ではありません。自分のスキルや実績がしっかり認められないと、戦略部門への門はなかなか開きません。今回ご紹介する永安さんも、最初はITコンサルとしてアクセンチュアに新卒入社し、その後MCへ移り、さらに戦略コンサルへの道を切り開くまでに何度も壁にぶつかったそうです。
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最初の不採用「ITコンサルの実績なんて、戦略部門には関係ない」
永安さんはITコンサル部門で働き始めて2年目くらいに、社内ポータルサイトで戦略部門のアウトプットを見て衝撃を受けました。企業の未来像を描くようなダイナミックな仕事がそこにはあり、「こんなプロジェクトに携わりたい」と思ったそうです。
そこで意を決して戦略部門の社内面接を受けたところ、「君がSI案件でいくら優秀だとしても、戦略にとってはその実績は採用理由にならない。もし本気で来たいなら、戦略と近しい領域で何か成果を出してみせてくれ」と言われてしまいます。そうしてあっさり不採用となり、一度は門前払いを食らいました。
MC(マネジメントコンサル)への移籍と「トップ3%に入る」という目標
戦略部門に直接行けなかった永安さんは、「ならばまずMCで実績を積もう」と考え、ITとMCが合同で進めるプロジェクトに参画し、そこで結果を出すことに専念します。
ITコンサルからMCへ移る際も、すでにMCで活躍していた先輩が「この人なら使えるはず」と推薦してくれたのが決め手になりました。最終的には、「今いる組織でトップ3%と言われるくらいの成果を出せば、次のステップが見えてくるはず」と腹をくくり、その通りに努力を続けたのです。
MC部門に腰を据え、そこで成果を出し続けた結果、いよいよ再度「戦略部門」への異動を本格的に狙うことになります。
戦略部門への再チャレンジ――「本当に戻ってきたのか」と驚かれた面接
ITコンサルからMCへ移った後、永安さんは改めて戦略部門の面接を受けました。以前と同じ面接官からは、「まさか本当にまた来るとは思わなかった」と言われながらも、前回とは違い、まず1か月、それがうまくいったら次の3か月と、お試し期間を段階的にクリアすることで正式異動を認める――そんな条件を提示されます。
最初の1か月はまさに洗礼のように厳しいプロジェクトに放り込まれましたが、上手く成果を残せず苦しんだタイミングで永安さんが救いになったのは、ナミブ砂漠250kmマラソン完走という非常にインパクトのあるエピソードでした。面接官(MD)は、その根性と行動力を高く評価。「こいつはやるかもしれない」と思ってもらい、延命の猶予を得ることができたそうです。
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戦略コンサルで味わう「まったく違う世界」
いざ戦略部門に入ってみると、その働き方や要求水準は「自分が使っていた仮説思考や論点思考がまるで通用しないくらいレベルが違う」と衝撃を受けるほどだったと言います。
一つの論点に対して矢継ぎ早に何通りもの仮説を立て、それをものすごいスピードで検証していく。プロジェクトの流れも一筋縄ではなく、毎日のようにゴールが少しずつ変わっていく。特に印象的なのは、ほかの人が受けたフィードバックですらすべて記憶し、自分のアウトプットに活かしていくというスタイルです。「もしかしたら自分も同じ指摘をされるかもしれない」と考え、他人へのフィードバックも自分事化する。
その積み重ねで徐々に戦略プロジェクトにハマっていったといいます。
「定石」を先に身につけ、実践の場で磨く
闇雲に実プロジェクトをこなすだけでは、なかなか本質的なスキルが伸びないと永安さんは語ります。将棋や囲碁でいうところの定石のような基礎的思考法やフレームワークを、先に頭に叩き込む。そして、プロジェクトでの実践を通じて自分なりにカスタマイズしていく。
そうすることで、いざ戦略部門の会議などで厳しいフィードバックを受けても、「あ、これは○○の定石を踏まえて指摘されているのかもしれない」とすぐに軌道修正ができるようになるそうです。結局、一度は何も成果を残せず苦しんだ永安さんも、こうした学び方を徹底することで戦略コンサルに正式に移籍し、昇進も果たしていきました。
コンサル同僚と結婚、そして起業へ
戦略コンサルで順調にキャリアを積んでいた永安さんは、同僚と出会い、結婚します。二人ともコンサルの激務をこなしながらも、「いつかは夫婦で何かを成し遂げたい」という思いが強くなり、結果として起業に踏み切ることになりました。
起業後は、日本酒と紅茶をブレンドしたSAKE TEAという新しいジャンルのお酒を開発。元コンサルらしく試作品を何度も作り、専門家の力を借りながらブラッシュアップを重ねて完成させたそうです。アクセンチュア時代から培った論理思考や行動力、そして「人の恩で商売は支えられている」という姿勢が、まさに今のビジネスにも息づいています。
トランスファーで見えたアクセンチュアの懐の深さ
永安さんのようにITコンサルから戦略へ、あるいはMCから別部門へ、といったダイナミックな異動ができるのも、アクセンチュアという会社が多彩な領域を抱えているからこそです。
ただし、永安さんが何度も語っていたように、どの組織でも「まずは今いる場所で結果を出す」ことが肝心です。やみくもに「戦略へ行きたい」と言っても、誰かに評価されるだけの実績がなければ門を叩けない仕組みになっているからです。逆にいえば、ITコンサルの実績をMCで評価され、そこでも上位3%に入るような活躍を認められれば、戦略コンサルへの移籍も夢ではありません。
まとめ:アクセンチュアのトランスファーを成功させるために
アクセンチュアの社内転職制度(トランスファー)は、個人のキャリアを大きく変える可能性を秘めています。ITコンサルでスタートしてMCを経て戦略コンサルへ移るというストーリーは、簡単には真似できないかもしれませんが、「まずは与えられた領域で結果を出し、そこから近しい領域へ少しずつ歩み寄る」という基本のステップは、どの部門異動でも共通するといえるでしょう。
自分の望むポジションに直行できなくても、諦めずに目の前のプロジェクトで信頼を勝ち取りながら、必要な知識や成果を積み重ねる。その姿勢を見せ続けることで、いずれ「一緒に働きたい」「この人なら戦略でも通用しそうだ」という評価に繋がります。
社内ポータルサイトで他部門の情報を調べ、面接官にアピールし、厳しい現場を経験したり、アイデアを持ち込んだりする。遠回りに見えても、その一歩一歩が次の扉を開く鍵になっていくのがアクセンチュアのトランスファーのリアルです。
社内移動という一見ハードルの高そうな道のりも、最終的には「実績を築き、評価を得る」ことで切り拓くことができる。永安さんの奮闘が、その一つの成功例を物語っています。もしあなたがアクセンチュアで「もっと上流で戦略的な仕事がしたい」と思っているなら、まずは今の場所で圧倒的な成果を残し、周囲のサポートを得られる立場を築いてみる。そこから先は、案外ドラマチックな展開が待っているかもしれません。
コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト
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